2012-06-05
2012-06-05
Tag: 不動産登記
添付書面としての印鑑証明書
昨日、法務局から印鑑証明書が足りたいとのことで補正の連絡がありました。
代表取締役個人が所有する不動産を、代表取締役となっている会社へ売却する所有権移転登記では、不当な価格での取引が行なわれないように、その会社の取締役会で承認されることが必要となっています。
この承認を決議した取締役会の議事録を登記申請に添付をし、その議事録には取締役が実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
これとともに、不動産を売却する代表取締役個人は、登記の義務者として委任状に実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
代表取締役は、登記の義務者としてと、取締役会に参加した取締役としての2つの立場で印鑑証明書を添付する必要があるのですが、これを1通の印鑑証明書で兼用することができず、2通添付する必要があるというのです。
これには、こういう理由だからという法務局側の見解があるのですが、もっと本質的なところで、どう考えてもおかしいのではないかと思っています。
印鑑証明書の本質は、ある書面に押印した印鑑が、実印であることを証明することにあります。このため、同一の場面で複数の実印を押印した書類があったとしても、印鑑証明書は1通あれば、それぞれに押印されている印鑑が実印であることを証明するには十分であるはずです。
よく、一般の人は、印鑑証明書の物理的存在自体が重要と考えていていますが、印鑑証明書の存在自体が重要なのではなく、ある書面に実印が押印されているということを証明するために重要となるもので、印鑑証明書があっても、実印が押印されている書面がないのであれば、印鑑証明書はなんの意味も持たないのですということを、説明させてもらっています。
でも、今回の法務局の扱いは、印鑑証明書の物理的存在そのものに意味があるといっていることになります。この扱いはどう考えてもおかしいと思っています。
ただ、登記実務では、先例という法務局が発表する取扱規程が非常に重要な意味をもっており、今年の1月に、横浜地方法務局では、このケースの場合には、印鑑証明書を2通添付することが必要であるという回答をしていたのを見逃していました。
徹底的に争えば、その先例は覆せるのではないかと考えてはいますが、そうすると依頼を受けた登記はその結果がでないと完了しないことになってしまい、どうするべきか悩んでいます。